IATAトラベルパスで何ができるの?
こんな疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルスが世界に猛威をふるってから、海外への渡航が難しくなっています。IATAトラベルパスは、海外渡航を容易にするために開発されたワクチンパスポートです。
ワクチンパスポートってなに?ってなったかもしれませんが、簡単に説明すると利用者の「PCR検査結果」や「ワクチンの接種履歴」を管理するシステムのことです。
IATAトラベルパスもワクチンパスポートの一種で、渡航者の健康状態を管理することができるシステムです。
この記事では、IATAトラベルパスのことを出来るだけ分かりやすく整理しています。
IATAトラベルパスとは
IATAトラベルパスは、IATAが開発したワクチンパスポートです。
IATAトラベルパスの導入で、海外渡航をする方が出入国の際にアプリ画面を提示のみで、旅客情報の管理を電子化していくことが期待されています。
世界の航空会社13社以上が実証実験に参画をしています。日本では全日空(ANA)が2021年4月に実証実験を行います。
IATAトラベルパスの「IATA」とは、国際航空運送協会(International Air Transport Association)のことで、国際路線を提供している航空会社が加盟している団体です。世界各国250社以上の航空会社が加盟し、世界の定期運航のうち約80%以上をIATA加盟の航空会社が占めています。
最近ではIATAへ加盟せず、独自に運賃を決めるLCCが増えています。
IATAトラベルパスが実用化される経緯
IATAトラベルパスが実用化されることになった経緯は、コロナ禍において海外渡航を容易にするための仕組みづくりが必要だったからです。
新型コロナウイルスが2020年の航空業界に与えた影響は非常に大きく、IATAは2021年以降の業績回復を期待しています。
しかし、海外渡航者を増やすためには「14日間の隔離検疫の免除」など、渡航者への負担を最小限化する必要があります。
2021年現在、世界各国でワクチン接種が開始されてますが、ワクチンだけで解決される可能性は低いです。
渡航者の負担低減を実現するためには、以下の点を考慮する必要があります。
・旅客の新型コロナウイルスに関する健康状態(PCR検査などの検査結果とワクチン接種記録)を正確に把握するシステム
この2点を実現するためには、旅客が「渡航前に必要な検査」と「検査を受ける施設」を正確に把握すること、そして「検査結果を各国政府に安全に共有」することが重要です。
IATAのアジア太平洋地域の担当者は、次のように述べています。
「ワクチン接種は時間がかかりすぎる。少なくとも1年から2年はかかる。しかも、ワクチンの世界的な入手可能性に大きく左右される。ただ検査とワクチン接種の組み合わせが、国境を再び開くことへの長期的な方策だと考えている」
担当者が説明している対策案がIATAトラベルパスです。
同じワクチンパスポートにコモンパスがあります。コモンパスについては、以下に記事を確認ください。
現状の海外渡航における課題
コロナ禍において、海外渡航を身近にするために検査とワクチン接種の管理が課題です。
ここをもう少し掘り下げていくと次の3点が大きな課題とIATAは考えています。
課題項目 | 詳細 |
---|---|
検査要件の多様化と複雑化 | 出入国するために必要な新型コロナウイルス検査要件が多様化している。政府(国)ごとに要求する検査(PCR、LAMP、抗原、分光法)が変わり、入国管理、旅客、航空会社にとって入国要件が複雑化してしまっている。 |
情報のギャップ | 旅客が渡航条件や検査要件の正確な情報を把握することが難しくなっている。そのため、正確な情報の伝達方法を確立する必要がある。 |
非効率、エラー、詐欺 | 入国管理をする担当者は、多くの入国要件ガイダンスに従いながら、旅客が提示する検査結果の信憑性を判断する必要がある。この管理は効率も悪く、エラーや詐欺にもつながり世界中で問題になっています。 |
各国が独自のルールで検査や管理をしていることから、渡航者が検査結果を共有したところで、信頼性が担保できていないのです。
解決に向けた具体的な解決策
IATAは課題を解決するために「情報フロー基盤の確立」に着手しました。
具体的には、以下の基盤構築に着手しています。
対象 | 詳細 |
---|---|
政府 | 信頼性のある検査、検査結果と身元を示す身元証明書を整備 |
航空会社 | 検査要件を旅客に正確に伝え、要件を満たしていることを確認できる仕組みを整備 |
陰性証明書の発行機関 | 政府が承認した証明書を発行できる仕組みを整備 |
旅客 | 検査要件と検査場所を把握し、航空会社や入国管理に結果を伝える手段を把握 |
この基盤構築を実現する解決策として、IATAは4点の整備を行っています。
整備内容 | 詳細 |
---|---|
健康要件 | 旅客が検査やワクチン接種に関する渡航要件を、正確な情報として見つけられるようにする |
陰性検査/ワクチン予防接種センター | 旅客が渡航先の国の基準を満たす検査やワクチン接種を受けられる場所を、正確に見つけられるようにする |
検査結果共有 | 検査機関や研究機関が、検査結果または予防接種証明書を旅客に安全に送信できるようにする |
トラベルパスアプリ | 旅客が以下の3点をできるようにする (1)「デジタルパスポート」を作成 (2)検査/予防接種が基準を満たしていることを確認 (3)航空会社や入国管理に対して、検査結果や予防接種証明書を共有できるようにする そして、旅行全体を通じ渡航文書をデジタルかつシームレスに管理ができるようにする |
この4点を実現させるために開発されたのが、IATAトラベルパスです。
IATAトラベルパスの利用方法は
IATAトラベルは、スマートフォン向けのアプリで提供されます。iOSとアンドロイドで無料で提供される予定です。
iOSはアップルストからダウンロードできますが、現段階では紹介された人のみが利用できる状態なので操作できなかったです。
アプリを利用することになった理由は、書類では偽造リスクが大き過ぎることがあげられています。しかし、国によっては書類での証明が必要で、アプリの普及の障害になっています。
例えば韓国がその例となっており、IATAは「韓国で書類による証明が必要とされており、デジタル証明が受け入れられるよう、同国政府と協議している」と説明をしています。
IATAトラベルパスで何ができるのか
IATAトラベルパスでは、次の項目が出来るようになる予定です。
主に旅客は出入国の際に利用します。
・顔認証で本人確認
・新型コロナウイルスの検査結果やワクチン接種記録をデジタル証明書としてアプリ上で管理※紙によるワクチン接種証明も対応は進むと思いますがアプリ利用が推奨です。紙はバックアップとして位置づけられています。
・各国の入国要件に関する最新情報を表示
現状はコロナ禍に安全に海外渡航をするための施策でIATAトラベルパスが実用化に向かっていますが、今後は旅行を楽しむための活用方法も実装される可能性もあります。
利用開始時期はいつ
IATAは2021年3月中に実用化を目指し、2020年12月から実証実験を開始しました。
予定より少し遅れましたが、2021年5月1日にシンガポール(チャンギ国際空港)で本格運用することが決まりました。
今後、実用化する国や空港が増えていくことが予想されます。
日本に関しては、全日空(ANA)が2021年4月に実証実験を国際線で実施します。
日本国内での実装も始まってますので、今後情報が随時公表されていくと思います。海外旅行を検討されている方は、ニュースを定期的にチェックをしておきましょう。
2021年3月現在IATAトラベルパスの実証実験を行っている航空会社一覧
本記事はIATAサイトの情報をもとに記載をしています。
まとめ
IATAトラベルパスを簡単にまとめると、以下の通りです。
・IATAが開発した旅客の情報を管理するワクチンパスポート
・2021年5月にシンガポールで実用開始、世界各国の航空会社でも実証実験を開始している
・実用化されることでPCR検査結果やワクチン結果をスマートフォン上で証明ができ、入国検査がスムーズになる
・入国後の14日間の隔離も排除できることが期待されている
海外渡航者数を上げるための施策でIATAトラベルパスが実用化されます。これからの海外渡航ではワクチンパスポートの利用が推奨されることが予想されます。
IATAトラベルパスが整備され、海外旅行が再び身近になることが楽しみですね。IATAトラベルパスの追加情報が出たら、本ブログでも取り上げて行きます。
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