2021年に入りワクチン接種が日本でも開始されて、私たちの生活にも少しずつ明るい兆しは見えてきています。
ただ世界に目を向けていくと、ワクチン接種が進んでいない国はたくさんあります。先進国だけワクチン接種が進んだとしても、すぐに海外渡航に関する制限が緩和されることは難しいです。
このような状況がしばらく続くと考えられるので、世界中で海外渡航を増やしていくためにコモンパスのようなワクチンパスポートが重要な役割を担ってきます。
コモンパスを利用することで何が変わるの?
この記事ではこんな疑問を持っている方に、答えていきたいと思います。
コモンパスとは
コモンパスは、ワクチンパスポートの一つです。
ワクチンパスポートを簡単に説明すると、利用者の「PCR検査結果」や「ワクチンの接種履歴」を管理するシステムのことです。
ワクチンパスポートの一つであるコモンパスは、世界経済フォーラムとコモンズ・プロジェクトが中心となり、37カ国以上の民間企業が参加して開発されました。
渡航者の新型コロナウイルス検査の結果やワクチン接種の履歴を示す世界共通のデジタル証明書の役割を担います。
米ロックフェラー財団の支援を受けて設立され、スイスに本部を置き、米国をはじめ世界各国で活動している非営利組織
コモンパスが導入されることで、アプリ上で海外渡航をする旅客の新型コロナウイルスの検査結果やワクチン接種履歴を管理できるようになります。
これはコモンパスの画面になります。このQRコードから渡航者の情報を取得します。
画像:学校法人東邦大学 プレスリリースより
日本でもコモンパスの導入は、着々と進んでいます。
2021年3月15日に東邦大学がコモンズ・プロジェクトと株式会社医針盤と連携し、東邦大学羽田空港第3ターミナルクリニックで、コモンパスと検査結果を確認できるスマートフォンアプリ「ウィズウェルネス™」のデータ連携を実装したとプレスリリースを発表しています。
そして、2021年3月29日に全日本空輸(ANA)がコモンパスの実証実験を実施しました。
コモンパスが必要な理由
なぜ、ここにきてコモンパスが導入に向けて活発に動いているのか。
それは、海外渡航者を増やしたいからです。
コロナ禍において海外に渡航することを容易にするためには、旅客と渡航先の国の安全確保をする仕組みづくりが必要です。
新型コロナウイルスの感染が広がって海外渡航者は激減し、航空会社に与えた打撃は計り知れません。いち早く海外渡航者を増やしていかないといけませんが、簡単な問題では無いです。
コモンパスのようなワクチンパスポートが実用化されていない状況では、入国者に対する水際対策は関係者の対応に負荷が掛かっています。航空会社も入出国する旅客の情報を把握するために、陰性証明書の確認など、従来以外の対応を行っています。
海外渡航者を増やすためには、旅客が新型コロナウイルスの検査やワクチン接種を実施し、その実施結果を容易に証明できる仕組みが必要になるということです。
現状の海外渡航における課題
これまでのように海外渡航を身近にするために検査とワクチン接種の管理が課題になりますが、ここをもう少し掘り下げていくと次の3点が大きな課題となります。
この情報は、国際路線を提供している航空会社が加盟している団体「IATA」が発表した課題を整理したものです。
課題項目 | 詳細 |
---|---|
検査要件の多様化と複雑化 | 出入国するために必要な新型コロナウイルス検査要件が多様化している。政府(国)ごとに要求する検査(PCR、LAMP、抗原、分光法)が変わり、入国管理、旅客、航空会社にとって入国要件が複雑化してしまっている。 |
情報のギャップ | 旅客が渡航条件や検査要件の正確な情報を把握することが難しくなっている。そのため、正確な情報の伝達方法を確立する必要がある。 |
非効率、エラー、詐欺 | 入国管理をする担当者は、多くの入国要件ガイダンスに従いながら、旅客が提示する検査結果の信憑性を判断する必要がある。この管理は効率も悪く、エラーや詐欺にもつながり世界中で問題になっています。 |
各国が独自のルールで検査や管理をしていることから、情報を共有したところで、信頼性が担保できていないのが実情です。統一のルール構築が必要です。
この解決方法として、ワクチンパスポートが重要な役割を担います。IATAは独自にIATAトラベルパスというワクチンパスポートの開発をしています。
IATAトラベルパスについては、以下の記事にまとめています。
【徹底解説】IATAトラベルパスとは【海外旅行には必須?】
コモンパスで何ができるのか
コモンパスでは、旅客の入出国の際に以下の内容を利用できるようになります。
・新型コロナウイルスのPCR検査結果の証明
・ワクチン接種の証明
・最新の検疫基準を満たしているかを判定
PCR検査結果やワクチン接種の証明は、公認の医療機関からのみ発行できる仕組みとなります。これにより航空会社など空港関係者の負荷軽減になることが期待されています。
また最初は海外渡航としての利用ですが、国内においても観光施設の入館時やイベント時の入場時のチェックなど利用範囲が広がる可能性も考えられます。
海外でも隔離なしの旅行を許可するためにワクチンパスポートの発行準備を進めているなど、ワクチンパスポートが私たちの日常の一部になる日がそう遠くはなさそうです。
コモンパスの利用方法
スマートフォン向けのアプリと連携で提供されます。
東邦大学の実証実験では、「ウィズウェルネス™」と連携しています。新型コロナウイルスのPCR検査結果や、ワクチン接種情報がパスポート番号とともにスマホに保存され、アプリ画面を空港係員に提示する。
「ウィズウェルネス」から「コモンパス」へのデータ連携の流れは以下の図の通りです。
画像:学校法人東邦大学 プレスリリースより
IATAトラベルパスとの違い
新型コロナウイルスの感染者の渡航防止や空港関係者の管理負荷軽減など、ワクチンパスポートとしては、同じ役割を担います。
世界を見渡すとワクチンパスポートは、IATAトラベルパスとコモンパス以外にも存在しています。どれを利用すればよいのか、どれでも良いのか、どう使い分けるのか、この辺りは現段階ではまだ発表されていません。
ただ、日本ではコモンパスとIATAトラベルパスがJALとANAが本格導入する見込みです。
情報がアップされ次第、更新していきます。
利用開始時期はいつ?
2021年3月現在、すでに世界では実証実験が開始されています。
2020年10月から展開し、ルフトハンザ ドイツ航空やユナイテッド航空、カンタス航空、ハワイアン航空などで進められています。
日本でも2021年3月にANAが実施し、JALも4月上旬にホノルル便で予定しています。
まとめ
コモンパスは、IATAトラベルパスと同じくワクチンパスポートです。
2021年以降の海外渡航ではワクチンパスポートが実用化され、その一つとしてコモンパスがあります。
コモンパスの特徴は、以下の通りです。
・2020年10月から世界では実証実験が開始され、2021年3月に日本でも実験を実施開始
・旅客の新型コロナウイルスのPCR検査結果やワクチン接種履歴を証明できる
・アプリ連携により、入出国の際にアプリ上で証明する
2021年に入り海外渡航をする人も増えてきていますが、これまで以上に海外旅行を容易にするためには、コモンパスのようなワクチンパスポートが必須です。いち早く実用化されていくことを期待していきましょう。
コモンパスの追加情報を確認したら、本ブログでも取り上げていきます。
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